中村伸一郎さんのちょっといい話

2024年1月発行/第118号

NPO法人スマイルポケット 代表理事
中村伸一郎さんのちょっといい話

子どもと一緒に笑顔を
地域ぐるみで子育て世帯を応援しよう

中村 伸一郎(なかむら しんいちろう)さん

1965年、神戸市生まれ。2000年、丹波篠山市に移住し、家具工房GAKUを開設。防災啓発を行うかたわら、全国各地の被災地でもボランティアとして活動。福島の親子を招く、笑顔つながるささやまステイを2015年から引き継ぎ開催。2020年からは、子育て世帯の支援活動を始め、2022年からNPO法人スマイルポケットの代表理事を務める。社会福祉士、防災士、インテリアコーディネーター。

私たちは悩みがあったとき、誰にも相談できないと不安や孤独を感じてしまうものです。たとえばワンオペ育児のような状況は母親の負担が大きく、それがシングルマザーの場合、精神的経済的な苦労は計り知れないかもしれません。NPO法人スマイルポケットは笑顔で子育てができるよう、しんどいママや子育て世帯に寄り添う活動を行っています。代表理事の中村伸一郎さんにお話を伺いました。

 

被災地支援も!
地域の子育ても!

私はかつてシステムエンジニアでしたが、モノづくりに携わりたくて脱サラし、家具職人になりました。丹波篠山市の農村部に工房を設け、木の風合いを生かしたオーダー家具を手がける一方、オフの日はいろいろなスポーツを楽しんでいました。あるとき、バレーボールをやりたくなり、当時流行っていたmixiで仲間を探したところ、未経験者も参加しやすいサークルを見つけることができました。そこには耳の不自由なメンバーがおり、ろう者チームの練習のお手伝いを頼まれたのがボランティア活動の第一歩でした。手話を少し学び、初級パラスポーツ指導員の資格も取るなど、ボランティアってちょっと楽しいなと思いましたね。

そんな私がボランティアにどっぷりと関わるようになったのは、友人からの頼みごとがきっかけでした。彼は2012年の春、東日本大震災・福島第一原発の事故で放射能の影響を受けている地域の子どもや保護者を丹波篠山市に招く取り組みを始めたのですが、たまたま私が8人乗りのミニバンを持っていたので送迎を依頼されたんです。「それぐらいなら!」と気軽に引き受けましたが、遠い出来事のように感じていた震災ですが、被災者のみなさんと実際に出会ったことで、もっと深く関わりたいと思いました。この活動は[笑顔つながるささやまステイ]として現在も継続中で、毎年、楽しい時間を過ごしてもらっていますが、2020年はコロナで一時中止になりました。用意していた30キロの米をどうしようかと思案していたところ、一斉休校で学校給食がなくなり、お腹を空かせている子どもがいるかもしれないと地元のパン屋さんが月数回パンの配布を行っていることを耳にしました。そこに便乗させてもらい、米を小分けにして配りましたが、そのうちにあちらこちらから食材等が集まるようになりました。シングルマザーが大変な状況で子育てしているとか、生活苦で食事が十分とれていないなどの情報が寄せられていたので、地域ぐるみの活動にしていこうと[丹波篠山の子どもの食と健康を考える会]が発足したんです。子どもたちの遊び場づくりを2か月に1回開催し、2021年にはお弁当の配布も始めました。

 

地域が抱える問題に
目を向けてみて

その一方で、災害そのものをテーマにした活動の[みんなで減災し隊!]を2016年に立ち上げました。福島第一原発の事故による放射能から、子どもたちを守ろうと頑張っているママたちを取り上げた映画『小さき声のカノン』の上映会が地元であり、災害全般について学びたいという意識が高まったからです。防災や減災に関する講座の開催や避難のポイントなどをまとめた『たんばささやま親子防災ノート』を2021年に発行しました。実は2014年の丹波市豪雨災害のとき、私は被災家屋の片付けに駆けつけたことがあり、以降、各地の災害ボランティアに参加するようになりました。家族を守り、被害を最小限に食い止めるための防災や減災の知識を多くの人に知ってほしいと思います。

[丹波篠山の子どもの食と健康を考える会]は2022年に法人化し、翌年4月[NPO法人スマイルポケット]として活動することになりました。月1回食材などを手渡す「ささっこスマイル便」、思いっきり遊べるみんなの居場所「ささっこ青空ひろば」、仲間づくりや情報交換ができる「ひとり親世帯の交流会」、気軽な食支援として利用できる「ささっこ弁当」の配布などを行っています。ささっこスマイル便の特徴として、地域の協同組合の協力を得ていることが大きいと思います。食材は「コープこうべ協同購入センター丹波」さんの冷凍冷蔵庫や倉庫で保管してもらい、仕分けの場所も使わせていただけるのでとても助かります。毎回コープ委員さんや地元企業のボランティアさんも作業を手伝ってくださいます。「JA丹波ささやま」さんからは直売所の売れ残り商品をいただくなど、食材の種類が増え、豊かになりました。このような地域ぐるみの活動を通じ、困っている子育て世帯とつながり、助け合える関係が築けたらと思っています。子どもたちの無料学習支援やシングルマザーの就労支援についてもいつか、取り組みたいですね。

TOPへもどる