福本大介さんのちょっといい話

2023年4月発行/第115号

兵庫こども食堂ネットワーク代表、へいなんこども食堂代表役員

活動団体がつながることで
こども食堂の継続をサポートする

福本 大介(ふくもと・だいすけ)さん

1983年生まれ、2018年へいなんこども食堂を開設。2021年兵庫こども食堂ネットワーク代表に就任。「私の趣味は人だすけ。毎日出会う人にどうしたら喜んでもらえるか、ということを常々考えて行動しています。そんな私の一番苦手なことは妻に喜んでもらうこと。これができたら向かうところ敵なしなのですが……しかし、これが難しい(笑)」

 

日本で「こども食堂」が注目されだしたのは約10年前のこと。こども食堂は食を通じて子どもたちの成長を見守り、地域のコミュニティづくりにつながる活動として、その輪が広がっています(全国約7000か所)。各地にこども食堂の中間支援組織がつくられているなか、兵庫県では[兵庫こども食堂ネットワーク]が県内100か所以上の活動団体をサポートしています。代表の福本大介さんにこども食堂の現状と展望についてお聞きしました。

 

食を通じて
地域の課題に向き合う

私は西宮市で[へいなんこども食堂]を運営しており、地域での取り組みをきっかけに兵庫県のネットワーク活動を担うようになりました。まずは地域の活動についてお話しましょう。へいなんこども食堂を開催したのは2018年のこと。地域の居場所づくりとして、ご近所のみなさんに一緒に夕食を食べませんかと声をかけたのが始まりでした。その頃は大勢で食卓を囲み、食後、子どもたちは射的や輪投げなどの身体を使ったゲームで遊び、大人はコーヒーで雑談するなど、ゆったりした時間を過ごしました。年3、4回の開催でしたが、多いときは100人ぐらい集まるので、メニューは毎回カレーを。つくり手が私と妻、ママ友の3人しかいなかったので、調理が簡単で人数調整のしやすいカレーはまさに理想のメニュー!味もまあまあ好評でしたよ(笑)。子ども100円、大人300円の会費を次の運営費に充てるなど、ギリギリの予算でやり繰りしました。

その後、新型コロナウイルスの流行により、こども食堂を中止せざるを得なくなりました。当時、西宮市の学校給食が牛乳、パン、チーズだけの簡易給食に切り替わり、それがひと月ほど続いたとき、子どもたちがお腹を空かせていることに気づいたんです。この状況でやるべきことは食支援だと考え、お弁当の無料配布を計画しました。食支援は命綱でもあるので、年3、4回だったこども食堂を週1回(毎週金曜日)に変更。コロナ禍でこども食堂を中止か、減らしているところが多いなか、私たちは敢えて増やす方向に転じました。コロナによってますます人のつながりが希薄になっているので、お弁当を通じて人を孤立させない、孤独にならないことに重きをおこうと思ったんです。

西宮市の補助金を申請し、資金を確保しつつ、他のこども食堂を訪ね、食材の調達などについて教わりました。コープこうべや大手量販店、食品メーカー、NPO法人フードバンク関西とつながりを持つことができ、ともしび財団の[やさしさにありがとうひょうごプロジェクト]の助成(2021年)をいただいたのはそのときのご縁です。2020年6月、30食のお弁当テイクアウトからスタートし、現在は10人ほどのボランティアスタッフが200食以上のお弁当をつくっています。やっていくうちに子どもだけで留守番をしているとか、ヤングケアラーや引きこもりなど、取りに来られない厳しい現状が見えてきたので、そういう人たちのほうがより食支援が必要だと考え、お弁当の宅配も行うようになりました。

 

ネットワークにより物資と情報を共有

[兵庫こども食堂ネットワーク]は県内のこども食堂が連携し、物資や情報、ノウハウを共有することで活動が継続できるようにサポートする中間支援組織です(2017年2月発足)。物資においては6か所(神戸・西宮・尼崎・赤穂・明石・北部地域)に拠点を設け、隅々のこども食堂に食材を届けやすくする体制を整えました。都心部は物資が集まりやすいため、地域間の格差が生じがちでしたが、ネットワークによって平等かつ希望に沿った分配が可能になりました。ただ、賞味期限の近い余剰物資がドンと寄せられてくることが多いため、食材のバランスが安定しません。定期的な食材の提供や分配にかかる配送コストが削減できれば、というのがさらなる願いです。

日々の活動に追われると助成金制度のような気になる話題を見逃しがちですが、ネットワークがあることで情報共有ができるようになりました。こども食堂の展望を見据えた取り組みとして、企業、行政の担当者との情報交流会や専門の講師を招いた研修会なども行っています。こども食堂をやってみたいという人の開設相談もお受けしています。

こども食堂は困窮者やひとり親家庭の支援、地域の居場所など、団体によって目的が違いますが、グレーゾーンの子どもを見つけやすいという共通点があります。そういう意味でもこども食堂は社会に不可欠な活動だと痛感します。こども食堂によって子どもを救うだけでなく、支える側の私たちが実は支えられていることに気づくことがあります。助け合いの輪をこれからも大切にしたいですね。

 

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