宗政美穂さんのちょっといい話

2022年4月発行/第111号

誰もが安心して暮らせる
福祉コミュニティをめざして

1998年から西須磨だんらんの活動に参加。
須磨に住まいを移し、ホームヘルパーの経験を積み、
2011年に事務局長に就任。
それまで自治会等の地元の活動に参加したことがなかったが、
西須磨で地域活動に関わり、その大切さを実感。
「だんらんでは訪問介護以外にも様々な事業に携わることができて楽しいです。これからも人とのご縁を大切にがんばりたいです」

 

 

困りごとがあったとき、助けてくれるご近所さんがいたら、どんなに心強いことでしょう。そのような誰もが安心して暮らせる福祉のまちづくりをテーマに精力的に活動しているのが[西須磨だんらん]です。エリアのほどよいサイズ感が福祉コミュニティづくりに功を奏しているといいます。当財団でボランティア活動助成にご協力いただいている宗政美穂さんにお話をお聞きしました。

小さな自治会活動から
8千世帯のまちづくりに発展

須磨区は六甲山系や須磨海岸など豊かな自然と歴史名所に恵まれた風光明媚なまちとして知られています。北部はニュータウン、南部は旧市街地で構成されていますが[西須磨だんらん]は南部の約8千世帯を対象に福祉のまちづくり活動を行っています。もともとは月見山自治会福祉部による年に1度の敬老会活動だけだったのが、高齢者問題に関心をもつ女性が多数加わったことで、ふれあい食事会や勉強会など活動が上向きに。その矢先に阪神淡路大震災が起こり、地域で支えあうことの重要性を再認識しました。安心して暮らせる福祉のまちづくりをめざし、1998年5月西須磨だんらんが発足したのです。

組織の立ち上げに私の大学の恩師が関わっており、「住民主体の福祉団体が生まれるから、ぜひそこに行って事例研究してきなさい」という勧めで、大学卒業してすぐの私は「仲間に入れてください」と飛び込みました。なぜ、そのような行動に至ったのかというと、海外NGOでのしくじり体験が私の背中を押したんです。そもそも私が福祉に関心をもったのは母が手話通訳士だったことがきっかけで、大学では国際社会福祉論を受講しました。海外で活動する夢を実現させるため、4年生のとき、フィリピンのNGOが行う短期研修に参加しました。そのNGOは無職の女性に少額貸付をし、自立できるまでの支援活動を行っているのですが、あるときケースワーカーさんから「日本にもこんな活動があるのか。何をしているのか教えてほしい」と聞かれたんです。私はそのような情報をまったく知らず、ひと言も答えられないでいたら、自分の国のことなのに……と呆れられ、とても恥ずかしい思いをしました。ふわふわしたミーハーな気分が吹っ飛び、まずは日本国内の活動を勉強してからだと決意し、恩師に紹介してもらったのが西須磨だんらんでした。とはいえ、当初は自治会や有志の人たちが集まり、ボランティアベースで活動していたので、組織の運営も私の生活もぎりぎり。何とかなるだろう精神で気がついたら24年間居ついてしまっています(笑)。

福祉の担い手も地域の仲間
働きやすい環境づくりを

西須磨だんらんは「生活援助サービス」という介護保険外の事業からスタートしました。これは公的サービスを受けていない人や受けていても足りない人に手助けするもので、お手伝いするワーカー(有償ボランティア)は時間預託として自分が必要なときに使うか、現金の支払いが選べます。時間と気持ちの持ち寄りで助け合いの輪を広げていこうというしくみです。制度内の事業ではミニデイサービスを週3回3か所で実施。それをやっていくうちに外に出かけて人と会うことで元気になるお年寄りの実態を知り、居場所事業を始めました。他団体とのネットワークによる事業では高齢や障がい、低所得などによって家を借りにくい人のための「居住支援事業」や、昨年からは中学生向けの「学習支援事業」も行っています。

このように活動を持続、発展させていくことができたのは立ち上げメンバーが自治会の地縁組織出身者で、地元にすんなり受け入れられたことが大きいと思います。もちろん、活動を知ってもらう努力は必要ですが、スタッフと利用者がPTAやサークル等で顔見知りのケースが少なからずあり、親近感をもたれ、良好な関係を築きやすくなります。西須磨というエリアのサイズ感が福祉コミュニティづくりに適しているのでしょう。

福祉団体はどこも人手不足が深刻で、うちの場合もボランティアの高齢化で70代のワーカーがそろそろ引退の時期を迎えており、50、60代の担い手を増やしていくのが課題となっています。ところが最近、知り合った子育て中のお母さんが、仕事はしたいけれど子どもが熱を出しても急に休みにくくて悩んでいるのを知り、うちならできるだけフォローするよと声をかけ、働き始めてもらいました。ママ友の口コミで子育て世代のワーカーが少しずつ増えています。気兼ねなく、安心して働ける環境は大事なことですね。ワーカーを契機に福祉の世界に興味をもってもらい、福祉コミュニティの輪が広がっていけばと願っています。

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