徳山雅治さんのお話

2022年1月発行/第110号

コープこうべの奨学金制度で

地域を支える若者に生きる力を

 

コープこうべ地域活動推進部統括部長
徳山 雅治さん(とくやま・まさはる)

1994年コープこうべに入所後、協同購入センター淡路センター長、コープ稲美店長、店舗事業部を経て2020年から地域活動推進部へ。「淡路島での経験が生協人生のターニングポイントになりました。ともしび財団やコープの先輩に触発され、多様な社会課題が身近に存在していることに気づかされました。地域課題の解決や社会貢献につながる活動をサポートしていきたいですね」

 

 

 

いつの間にか耳なじみのする言葉になった「子どもの貧困」。現在、18歳未満の7人に1人が苦しい生活状況におかれ、将来の進路が大きく左右されようとしています。コープこうべでは次世代を担う若者へのサポートとして高校生向けの給付型奨学金制度を創設し、子どもたちの未来を応援しています。担当の徳山雅治さんにお話をお聞きしました。

孤軍奮闘する
高校生

今年8月、コープこうべでは高校生向けの給付型奨学金制度がスタートしました。学習意欲はあるけれど経済的な事情で就学の継続が困難な高校1年生を対象に、毎月1万円を卒業まで給付するものです。この制度ができた背景には格差社会といわれるなか、コロナ禍で長引く緊急事態宣言によって貧困の深刻度が加速され、若い人たちにも影響が及んでいることなどがあります。コープこうべは、将来の地域を支える若者に生きる力を育んでほしいという願いから、若者支援のひとつとして高校生向けの給付型奨学金制度を設ける運びとなりました。なぜ高校生なのかというと、ほとんどの生徒が高校に進学する時代ですが、経済的な理由で中退するケースが少なからずあり、高卒資格が安定的な仕事につける分岐点でもあり、貧困の連鎖を止める重要なポイントと考えました。

奨学金制度を実施するに先立ち、子どもの貧困について実態調査を行いました。母子家庭など大人ひとりで子どもを育てる世帯の貧困率が50%に近いことから、シングルマザーを支援する団体に聞き取りをしたところ、コロナ禍により経済的に追い詰められ、クラブ活動をやめたとか、塾をやめたなど、諦めてしまう高校生の姿が浮かび上がりました。自立の意識が芽生え、将来の夢がふくらむ高校時代を豊かに過ごしてほしい、学業の継続と体験の応援で夢をかなえてほしい―そのような思いもこの制度に込められています。

申請の募集については高校やマスコミへの呼びかけ、チラシ、ホームページによる広報の結果、128人の応募があり、うち51人が高校からの紹介でした。当初は中学を卒業する前に応募を受け付け、高校1年生の4月からスタートも検討したのですが、高校の先生にヒヤリングしたところ、担任の先生が生徒の生活状況を把握できるのは夏休み前の面談ということがわかり、申請時期を8月~10月に設定しました。送られてくる応募書類のなかにひとり親家庭の実情やヤングケアラー等、想像以上の厳しい現実が見えてきました。コープこうべにとっても社会課題を直接、捉える機会となりました。最終、選考委員会を開催し審査の結果、82人の奨学生が決定しました。

生協は社会課題と組合員を
つなぐプラットホーム

今回の奨学生審査で痛感したのは、子どもの貧困は目の前に存在していたのになかなか見えにくいということでした。生活苦にあえぐ子どもたちに手を差し伸べ、寄り添えるやさしい社会でありたいと切に感じています。私自身、社会の課題を地域とともに解決したいと意識するようになったのは淡路島でセンター長を務めていたときの経験があったからなんです。軽トラも入れない山奥の限界集落に住む高齢の組合員さん宅にどうしたら商品をお届けできるか検討していたところ、地域のヘルパーさんが訪問介護に合わせて配達を引き受けてくださいました。困りごとがあったとき、地域に声をかけたら手を挙げてくださる人がいることに深く感動し、生協が社会課題と組合員をつなぐプラットホームの役割であると実感しました。

今後は相対的貧困問題についてのイベントや学習会を開催したり、くらしの不安を安心に変える生協運動として組合員の参加を広げていきたいです。また、奨学生を含む若い人にもボランティア活動等への参加を呼びかけるなど、さまざまな社会体験への参加のきっかけづくりを提案したいと考えています。若い人を支えたいという組合員が増え、誰ひとり取り残さない豊かな社会を目指していきたいですね。

 

 

 

 

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