一ノ間麻紀さんのお話

2021年10月発行/第109号

BONBONCANDY(ぼんぼんきゃんでぃ)にじいろじかん 理事

深刻な不安を抱える
病気の子どもたちに
豊かな未来を実現させたい

ともしび財団では協賛企業やコープこうべとともに社会的課題の解決に
意欲的な市民団体を応援する「やさしさにありがとう ひょうごプロジェクト」
を実施しています。今年度の助成団体である[BONBONCANDYにじいろじかん]は
我が子の闘病経験をもつ母親とすべての子どもたちへのやさしい未来を願う
母親が集い、子どもの遊びイベントや家族の支援活動を行っています。
理事の一ノ間麻紀さんにお話をお聞きしました。

 

 

保育士として保育園や幼稚園で勤
めた後、小児科病棟の病棟保育士
として病気と闘う子どもたちと2年過ごす。
翌年に出産、4年後我が子の病気が発覚。
闘病生活を送る中であらためて
「治療中の子どもたちや家族に大切
なことは笑顔で過ごすことであり
決して子どもの遊びをあきらめて
はいけない!」と同じ想いを持つ
母親達と[BONBONCANDYにじいろじかん]を
立ち上げる。

 

 

子どもにとって遊ぶことは
生きることそのもの

がんは高齢になるほど増えてくる病気ですが、ごく少数の割合で子どもに発症することがあります。その小児がんでもっとも多いのが血液がんの一種、急性リンパ性白血病で、私の娘は4歳のとき、この病気が判明しました。ちょうど自営業をやり始め、子どもを保育園に預けるなどバタバタと忙しい日々を過ごしていたので、「今日からママはお仕事を辞めて、病院で一緒に過ごすことになるよ」と言うと、ママを独占できると思ったのか、とまどいながらも嬉しそうだったのがやりきれなかったですね。
私は小児科病棟の保育士として働いた経験があり、子どもの白血病は治療成績がよく、治せる病気であることや当時の看護師さんに相談させてもらうなど情報を得ていたので、ほかのお母さんよりはかなり救われていたと思います。治療がスムーズに進み、4か月後に退院を迎えることができたとき、「やっとここから抜け出せる、これから楽しい生活が始まるんだ」と期待に胸を膨らませましたが、待っていたのは厳しい現実でした。引き続き自宅での抗がん剤服薬治療の影響で、娘の免疫力はとても低く、菌やウイルスを寄せつけないためには感染対策を徹底しないといけません。つねに消毒薬を持ち歩き、調理ではナマモノの扱いに注意し、人との接触を避け、夜に買い物に行くなど、家に閉じこもる生活が続きました。入院中には予想もしなかった孤独やプレッシャーを退院後に思い知らされましたね。
そんな私をなぐさめてくれたのが同じ病気の子どもをもつママたちでした。なかなか人には言えないつらい体験を語り合うことで気持ちが癒され、元気をもらうことができます。ママたちと情報交換するなかで、病気の子どもたちが遊べる場所をつくりたいねという話題になりました。とくに入院中は体に負担のかかる治療が行われるので、遊びをあきらめてしまい、子どもから笑顔が減ります。子どもにとって遊ぶことは生きることそのもので、子どもらしくいられる時間はいましかありません。私は退院後の子どもが安心して遊べる場所を探しましたがなかなか見つからず、インスタでも問いかけてみたところ、大阪の[※TSURUMI こどもホスピス]について教えてもらうことができました。しかし娘は保育園に復帰することになっていたので、利用は叶いませんでしたが、子どもの尊厳を大切にする取り組みにおおいに共感しました。自分たちもそのような場所づくりをめざそうと2020年3月[BONBONCANDYにじいろじかん](略:ぼんきゃん)の活動が始まりました。

 

小児がんのつらい経験を
未来をよくする力に変えたい

ぼんきゃんでは、退院後の子どもが偏見にさらされず、リラックスしながら楽しめる草花遊び会を開催しています。既製のおもちゃにはない発見や感触、香りを体験し、ちぎったり、すりつぶすなど指先をたくさん使うことで五感を刺激し、心のケアを図ります。病気でない人も参加できるので、病気への正しい理解につながればと思います。子どもの表現を尊重するアートイベントや病院内でも遊べるアートキットのプレゼントも実施しています。

私たちの遊びでは必ず、オリジナル紙芝居『ミケまるとトラきち』を観てもらっています。ストーリーは闘病をしていてもしていなくても、同じ時間を違う場所で過ごしたお友達が互いに敬意を払うという内容で「自分と異なるものをそのまま受け入れる」やさしい社会であってほしいという思いを込めています。

家族の支援活動においては小児がん経験者の家族とWEB座談会を実施し、情報の共有を強化したいと考えています。長期付き添い入院等による子どもの発達やほかのきょうだいのケア、仕事との両立などさまざまな不安や悩みに寄り添い、いま頑張っている家族に手を差し伸べ、小児がんのつらい経験をできるだけポジティブに変換することで未来をもっとよくする力に変えたいと願っています。退院後も寄り添えるコミュニティの実現をめざしていきたいですね。

 

※TSURUMI こどもホスピス/生命を脅かす病気の子どもの学び、遊び、憩い、やってみたいと思うことを叶え、その子の「生きる」を支えるための「第2のわが家」を理念とする活動。

 

 

 

 

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