前田裕保さんのちょっといい話

2021年7月発行/第108号

コープこうべ地域活動推進部 拠点づくり推進 統括 (現 第1地区本部 本部長)

社会的課題の解決と地域の
居場所づくりで誰もが
暮らしやすい社会の実現をめざす

 


1989年灘神戸生協(現コープこうべ)へ
入所後、宅配事業一筋。2014年宅配事業部
訪問供給サポート、拠点づくり推進部などを
経て現職。社会課題が多様化する中、公益
性の高い活動を行う地域諸団体とつなが
り、その団体の活動を支援する。「私自身は
DV支援員や炊き出しのお手伝い、伴走ボラ
ンティアなどをやっています。ランニングが
日課となり、いつの間にか適正体重に(笑)。
誰かのために走ることで長続きしますね」

 

ともしび財団では「若者のボランティア人材育成」をめざして高校生の
ボランティア活動を顕彰しています。
その顕彰団体のひとつでもある「県立尼崎西高等学校ボランティア部」は
コープこうべの居場所事業「大庄元気むら」で、地域と協力した多世代交流を
行っています。
居場所事業などの地域活動に携わる前田裕保さんにお話をお聞きしました。

地域の居場所は
ひとや社会を幸せにする

昨年12月、尼崎の大庄地区住民と尼崎西高校による合同文化祭が
「大庄元気むら」で開催され、全国でもあまり例のないものとして大きな
反響をいただきました。
「大庄元気むら」は地域活動推進部が手がける居場所のひとつ。
コープこうべの居場所事業は、2014年に宅配事業の傘下で立ち上がった
「超高齢社会における必要なしくみを構築する」というプロジェクトチームが
始まりです。

それまで宅配事業一筋だった私は突然このテーマと向き合うことになりました。
「超高齢社会の問題は〈健康、孤立、経済〉の3つの不安要素に集約されること。
その解決策として人が集い、不安や困りごとを相談できる場が必要である。
コープこうべには150ほどの店舗があるので、店内の空きスペースを利用すれば
地域の居場所づくりが可能」という提案をすると、なんと私が居場所事業の担当者に。
生協には社会的課題の解決をめざすという命題もあることから、居場所づくりを
しながら社会的課題を解決していくという事業がスタートしました。

居場所事業は店舗の空きスペースや地域のフリースペースを利用し、地域の人たちが
いきいきと過ごせる場の創生を目的としています。
主役はあくまでも地域住民、私たちは見守りに徹することを心がけています。
居場所の設定は高齢化が進んでいるエリアをターゲットに現地をリサーチするところ
から始まります。地域にアンテナを張ると「ここをなんとかしたい」という世話好きな
人が見つかるものです。そんな地域愛にあふれる人がさらに人を呼び、多様な社会的
課題の団体ともつながっていくので、支援と共感の輪が広がりますね。

尼崎の大庄地区は高齢者と単身者の割合が高いエリアで、2017年から調査をして
いました。閉店予定だったコープ大庄を改装し、2019年11月コミュニティスペース
「大庄元気むら」がオープン。
地域の活性化には若い力も必要と考え、地元の学校に声をかけたところ、尼崎西高校
ボランティア部が手を挙げてくれました。
会議の場に高校生がいるとこれまでにないアイデアが飛び出し、みんなが元気に
なります。地域で何かしたいという話題になったとき、「コロナで中止になった文化祭
を地域の人に見てもらえたらいいね」と盛り上がり合同文化祭に結びついたんです。
コロナ禍で開催が危ぶまれましたが、動画やZoom配信を取り入れるなど対策を
徹底し実現できたのは大きな成果でした。

ハッピーな話題はそれだけではありません。高校生が地域の大人と触れ合うことで
進路を決めるきっかけを得たり、孤独な高齢男性がここで知り合いが増え生きがいを
持てたなど、居場所がもたらすパワーのすごさを実感しています。

 

不平等な社会を変えることが
コープこうべの使命

社会的課題については実態を把握するため、いろいろな市民団体を訪ねました。
最初に出会ったのはシングルマザーを支援する団体で、シングルマザーになった要因が
夫の自死やDVによるケースも少なくなく、体験談を聞いたときのショックは
今も忘れません。

日本では毎年約2万人が自殺し、それをコープこうべの店舗利用者にあてはめると
1店舗あたり毎年2人が亡くなる計算になるんです。
DVはニュースで聞く遠い出来事のように思っていましたが、兵庫県は人口あたりの
DV被害者が全国でも多い地域だそうです。
その他にも子どもの貧困や不登校、孤独な子育てに悩むお母さんの現実も知りました。
今の時代は誰もがセーフティネットから抜け落ちやすく、それを救えない社会である
ことに気づかされたんです。

その一方で世間の偏見や差別意識の根深さも知りました。
本来であれば被害者であり、守られるべき人たちが、逆に責められることもある
そうです。生きづらさを抱える人たちへのアプローチだけでなく、偏見や差別を
なくしていく努力も大切なことですね。
暮らしを守り、健全な社会をめざすことがコープこうべの使命と考え、これからも
活動に邁進したいと思います。

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