脇原隆司さんのちょっといい話

2021年4月発行/第107号

特定非営利活動法人 兵庫セルプセンター事務局長兼事業企画部長

障がいがある人の仕事を全力サポート
豊かな人生を地域とともに

 


大学卒業後、一般企業にて企画営業職に
従事。2008年NPO法人兵庫セルプ
センターに入職。兵庫県、神戸市の
共同受注窓口事業の他、障害福祉事業所が
製造する商品(菓子)のレベルアップと
販路拡大を目指すコンテスト「スウィーツ甲子園」
兵庫県内の事業所商品の販売サイト
「+NUKUMORI」等の事業を担当。

 

チャリティーバザーなどで障がいがある人たちの手作り品を見かけたことは
ありませんか。温かみを感じる素朴さと本物志向が持ち味で、
ファンも多いようです。そんな障害福祉事業所のモノづくりを全力サポート
する兵庫セルプセンターの脇原隆司さんにお話を聞きました。

働く願いと事業所の元気を
社会につなげよう

障害福祉事業所の商品はおもにバザーやお祭りなどの地域のイベントで販売
されています。それらが売り上げの多くを占めているのですが、新型コロナ
ウイルスの影響でイベントが中止になり、販売の機会が失われてしまいました。
そんななか、コープこうべに協力をいただき、「つながるマルシェ」という
販売会が各店舗で実現(2021年2、3月)。地域とともに生きる人たちの
つながりだけでなく、自分たちの商品が近所のコープで売られるという喜びと
やりがいが感じられたうれしい取り組みになりました。

兵庫セルプセンターとは障害福祉サービス事業所の仕事を支援する組織で
そのような団体は全国に存在します。兵庫県の場合、平成13年に兵庫県社会就労
センター協議会が授産活動活性化事業を始め、さらに活動を充実させるため、
平成16年に当センターが発足。
「障がいがある人たちの働く願いと事業所の元気を社会につなぐ」を合言葉に、
障害福祉事業所の〝働く〞に関わるさまざまな支援を行っています。

なぜ支援が必要なのかというと事業所での仕事は工賃が低く、自立生活が
難しいという現実があるからです。とくにモノづくり(授産)においては
体制が脆弱です。そのためセンターでは問題解決に向けて障害福祉サービス
事業所の販路拡大につながるさまざまな事業を展開しています。

 

「買ってください」から
「選んでうれしい」商品を

たとえば、事業所でクッキーを作ることになった場合、支援者にクッキーづくり
の得意な人がいて、事業に踏み切るケースが多いと聞いています。
大量生産や機械化をめざしているわけではないので、ハウスメイドの延長です。
障がいのある人が仕事のどこを分担するかは事業所には福祉のプロがいるので、
それぞれで工夫されますが、問題なのは商品の企画や営業が得意ではないことです。
企業ならお客さんが買いたくなるような製品戦略は当たり前なのかもしれませんが、
事業所の状況は少し違います。

吟味した材料を使い、手作りで丁寧に仕上げた商品でも、その魅力を伝えるという
ところが企業ほど上手ではありません。そこで私たちはどのようにすれば、もっと
クッキーが売れ、工賃アップにつながるか、事業所と一緒に考えます。
専門家とのマッチングにより、事業所の技術力・商品開発力等のスキルアップを
めざしたり、プロの手を借りて、デザイン性にすぐれたパッケージを企画するなど、
製品戦略のお手伝いもします。
そのような取り組みの結果、最近では一般と比べても引けを取らない商品が増え、
おいしさだけでなく、「人にも勧めたい」「クラウドファンディングみたいで
うれしい」と評判を呼んでいます。
なかでもお菓子の品質向上と販路拡大をめざすコンテストの「スウィーツ甲子園」は
平成21年度から実施していますが、商品のレベルアップには目を見張るものが
あります。地元の農産物を使うだけでなく、乳製品や酒造メーカーと共同で
開発するなど、地域連携のユニークな商品が話題になっています。

今後も地域とのつながりをこれまで以上に作っていきたいと考えています。
地元企業の困りごとや地域の課題を福祉の側で担うことができれば、仕事開拓になる
だけでなく、地域の活性化に貢献できるかもしれません。
地域と福祉をつなげる企画はまだまだありそうです。

また、コロナ禍における販売方法としてインターネットショッピングにも力を入れたい
と思っています。
すでに兵庫県の委託による「+NUKUMORI(ぷらす ぬくもり)」というサイトを
当センターが運営していますが、販売に特化した内容にとどまっています。
事業所独自のサイトがあれば、頑張っている姿やモノづくりのメッセージを発信でき、
お客さんの声もダイレクトに聞くことができます。そのようなサイトの立ち上げにも
支援していきたいですね。

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