宇津井英輝さんのちょっといい話

2021年1月発行/第106号

コープこうべ供給事業本部 買い物支援 統括

「移動店舗」や「買いもん行こカー」で
買い物ができる当たりまえの暮らしを


2003年契約職員として入所、06年
総合職員に登用。協同購入センター三木
協同購入センター丹波、宅配事業部
電力事業TF、協同購入センター但馬、電力事業
を経て、現職。「20代の頃、仕事で悩んでいた
私を力強く励ましてくれた友人がいました。
コープ職員だったその彼の見ていた世界が
見たくて30歳のとき自分もコープこうべへ。
組合員さんの温かさや信頼関係は彼の言葉
どおりでした。この感動は私の宝物です」

 

少子高齢化や地域事情などで、日常の買い物ができなくなってしまった人を
「買い物困難者」といいます。交通手段がない、足腰が弱ったなどで買い物が
困難になる事態は誰にでも起こりうること。他人事ではありません。
コープこうべではそのようなお困りの対策として、さまざまな買い物支援事業
を行っています。担当の宇津井英輝さんにお聞きしました。

移動店舗が
地域コミュニティに貢献

いつの時代も日常の買い物に不便を感じる人は存在したでしょう。
しかしそれが「買い物難民」という社会現象としてクローズアップされたのは
今から15年以上前のことで、ある報告により、高齢者が買い物困難に強いられている
「見えない実態」が浮き彫りになりました。

人口減に伴い、路線バスなどの公共交通機関の減少や高齢者の免許返納などで
移動手段を失うことが要因のひとつと考えられ、買い物に困る高齢者はさらに増加
する見通しです。農林水産省は「店舗まで直線距離で500m以上、かつ、65歳以上で
移動手段を持たない人」を「買い物困難者」と定義しており、地方だけでなく
「オールドタウン化」した都市部での増加も顕著になっています。
想像してみてください。往復1㎞以上、その片道を重い荷物を持って歩くのです…
雨の日も寒い日も。若い人でもしんどいですね。買い物困難によるダメージはそれだけ
ではありません。外出するために服装を整え、近所の人とコミュニケーションをとる
などの暮らしのうるおいも失われてしまうのです。とくに女性は買い物を好まれ、実物
を手に取って確かめたいという方が多いので、買い物ができない苦痛は相当なものだと思います。

コープこうべでは買い物困難の課題に対処すべく、2011年に「移動店舗」をスタート
させました。これは専用車両に生鮮食料品などを積み、決まった場所(停留所)に
週1回、同じ曜日、同じ時間に運行するシステムで、現在、9台が約520カ所/週の
停留所を訪問。約2500人/週が利用されています。車は2トントラックと軽自動車の
2タイプで、2トン車は約800品目を積み、中山間部をエリアとする一方、軽自動車は
約400品目を積み、小回りの利く住宅地を運行しています。
ドライバーは地域や曜日による売れ筋を把握しているので「今日は刺身がよく出るだ
ろうから、多めに揃えておこう」など、ニーズに合わせた品目をその日の朝、新鮮な
状態で積み込みます。

移動店舗は地域から「うちに来てほしい」という要望が強く、小野市市場地区の場合は
行政との3者協定のもと、自治会が中心となり、スタートしました。
事前に自治会が約3,000軒にアンケートをとり、利用したい住民マップをもとに停留所を
決定。地域の愛唱歌を流して到着を知らせ、声をかけあいながら集まってこられるので
停留所はいつも大にぎわいです。自治会の役員さんがお年寄りの介助や袋詰めの手伝い
をされたり、机やいすを出して井戸端会議を楽しむなど、買い物から広がるコミュニ
ティには目を見張るものがあります。
小野市をモデルに、神戸市西区美穂が丘でも同様の取り組みを行っています。

喜びの声が続々!
買い物による相乗効果も

買い物支援の取り組みとして今、もっとも注目されているのが乗り合いタクシー方式の
「買いもん行こカー」です。コープデイズ神戸北町を擁するエリアは坂道が多く、
買い物にお困りの組合員さんが多かったことから、2016年10月に事業がスタート。

店舗から車で20分圏内にお住まいの65歳以上か、障がい者手帳を所有、あるいは
未就学児をもつ組合員さんを対象に自宅までの往復を無料送迎します。
8人乗りのミニバンで巡回し、店舗で約60分買い物をしていただく間に、別のエリアの
組合員さんをピストン送迎するので、車の稼働にロスがないことと、移動店舗のように
車両を改造する必要がないため、展開しやすい事業といえます。
現在、19店舗で17台が運行し、約2,150人が登録されています。
平均年齢は80.1歳、ほぼ女性です。「夫が病気で倒れ、車の運転ができなくなり途方に
暮れていた。本当にありがたい」「運転手さんをはじめ、みなさんと乗るのが楽しい」
など喜びの声が多く寄せられています。独居利用者の安否確認や利用者さんたちの
絆づくりにも役立っています。

また、現在はコロナ禍により行っていませんが、高齢者施設の入居者を「買いもん
行こカー」でお連れし、ボランティアが付き添う「ショッピングリハビリ」では
普段じっとしている方が買い物で歩き回り、生き生きとした表情を見せるなど
リハビリ効果もてきめんです。

これからもみなさんのお役に立つ、買い物支援事業の充実に務めていきます。

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