神戸星城高等学校コンピュータ部の物語り

勇躍 -新長田から日本、そして世界へ-

コープこうべ職員 長谷川 善久

 

神戸星城高校のコンピュータ部はインターネット上で店巡りの疑似体験ができる「バーチャル商店街」を制作し、新聞やニュースで有名になった。あれから6年が経つが、新たなチャレンジに向かっている。

神戸星城高校の前身の神戸女子商業高校は、JR新長田駅南の大正筋商店街にあった。しかし1995年の阪神・淡路大震災に遭い、同市須磨区に移転。校名も神戸星城高等学校となり、共学になった。

震災後、同部の顧問、延原宏教諭は岡山の公立高校に移り、13年後に神戸に戻って来た。「もともと決まっていた転勤とはいえ、被災した生徒たちに何もできず神戸を離れたことが、非常に心残りだったんです」と語る。

久しぶりの故郷である大正筋商店街は、高齢化が進み、かつての賑わいもなかった。生徒たちがいなくなって淋しそうな商店街。一念発起し、彼は地域と生徒を繫げる復興を目指す。

バーチャル商店街は、インターネット上であたかも商店街を歩いているような疑似体験ができる。5メートルおきに景色が変わり、各店舗をクリックすると、営業時間や店舗情報などが表示され、買い物も出来る。店主と共同でCM作成も行い、完成度の高いウェブサイトだ。

すでに大正筋商店街、六間道商店街、本町街商店街、西神戸センター街の4つのバーチャル化を終えている。新しい取り組みとして、新長田再開発で建設予定の合同庁舎職員をターゲットにした地域情報誌「FULLBUL(フルブル)」の製作も始めた。地域貢献の一環として、近隣地域住民対象のパソコン教室も精力的に行っている。

取材当日もパソコン教室を覗かせてもらった。生徒たちが主体となって、行われていた。生徒たちが自発的に企画・立案し、実行し、検証を繰り返す。P(プラン)D(ドゥ)C(チェック)A(アクション)サイクルが出来上がっている。生徒たちは、バーチャル商店街制作を通して、情報収集能力や対面技術を取得し、ビジネスセンスとコミュニケーション能力を身に付けたのであろう。頻繁に行われたグループディスカッションで培われたメタ認知(客観的自己分析)能力も高い。地域活性化の手助けが出来ているという達成感が、生徒たちをより積極的に成長させている。

「公立と私立の学校は違うんです」と彼は言う。

神戸星城高校は私立学校で、生徒の居住エリアが公立学校より広い。そのため近隣地域出身の生徒は公立学校よりも少なく、近隣地域との関係性が希薄になりやすい。バーチャル商店街や地域情報誌の制作、パソコン教室を通して地域貢献をする。それをアイデンティティーとし、次のチャレンジのモチベーションへ繫げる。地元愛がベースの「延原イズム」が継承され、延原ファミリーがどんどん巣立っている。

ICT技術を活かすために企業の開発部門に進む生徒も多く、地域活性化を担うために自治体への貢献を希望する生徒もいる。

最近は、教え子から連絡はあるものの忙しくて、なかなか顔を見せに帰って来ない。そんな状況を淋しく思うが、嬉しくも思う。研究・開発に没頭している証拠だと誇りに思う。

新長田の商店街を元気にしてきた教え子たちが日本を元気にし、世界で活躍する日を確信している。彼の強いまなざしを見ていると、その日がそう遠くない未来だと思えた。

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