浜・川・山の自然たんけん隊の物語り

伝承 –語り継いでいくもの-

長谷川善久(コープこうべ職員)

1/6(土)新年最初の土曜日の朝、私は、夙川河口にいました。「浜・川・山の自然たんけん隊」の定例活動日です。
このグループは、夙川河口の御前浜・香櫨園浜の清掃や自然観察会などを通じて、貴重な自然海岸の生物多様性の保全に取り組んでいます。また、津波避難訓練なども行っています。阪神淡路大震災の死者のうち、約2割が西宮で亡くなっています。その教訓を踏まえて、率先避難者になるためです。自然の豊かさを守り、自然の怖さを知り、自然と共生できる社会を作っていきたいという熱意を持って活動されています。この日も、親子を含めた合計19人での活動となりました。

海岸に降りてみると、最近のごみに混じって、ぼろぼろのプラスチックごみが多いことに気付きました。これが「マイクロプラスチック」になると言われています。波や潮の満ち引きで海岸に打ち上げられ、太陽の光に当たったり、砂にもまれたりして、小さく砕けていく。そして、波や潮の満ち引きで海へ戻っていき、どんどん広がっていく。その小さな粒子の表面にさまざまな有害物質が付着し、食物連鎖の様な形で、海の生き物に汚染が広がる可能性があります。
事務局長の粟野真造さんは、「この浜のごみが世界中の海を汚染し続けて欲しくないんです」と、懸念しています。約1時間の活動で、可燃ごみ14キログラム、不燃ごみ1キログラムの合計15キログラムのごみ撤去ができました。

この日は松の内。清掃活動の後は、日本伝承遊びの「貝合わせ」をしました。はまぐりの貝殻を並べて、ひとつの貝殻に合う貝を見つけるという、現代の神経衰弱に似た平安貴族の遊びです。貝殻の内側には、源氏物語などの優美な絵が描かれています。はまぐりは、対となる貝殻としか組み合わせることができません。そのため唯一無二のペアとして、夫婦和合の象徴とされ、貴族の嫁入り道具のひとつでした。
西宮自然保護協会事務局長の大谷洋子さんのご指導のもと、自分たちの現代版貝合わせも作成させていただき、子供たちと一緒に雅な遊びに興じました。

 

事務局長の粟野真造さんは、福祉介護関係の仕事をされています。「きれいな景観を見ると、どんな人でも笑顔になるんですよ。その笑顔を見て、周りの人も笑顔になるんです。きれいな景観には、癒しの効果があるんです。その効果に勝る薬なんてないんですよ」


その優しいまなざしに、私の心も癒された気がしました。御前浜・香櫨園浜が、今よりも素敵な浜になっていくことを祈りつつ、必ずそうなっていくと確信を持ちました。
このグループの活動は、かつて日本人が大切にしてきた自然への畏敬の念や、その文化を後世へ伝達し、継承していくというかけがえのないものだと思います。
私もできる範囲で、できることをして、このグループの活動を応援していきたいと思います。

2018年1月

TOPへもどる