馬場正一さんのちょっといい話

社会福祉法人兵庫県社会福祉協議会事務局次長

兵庫県を地域福祉への参画と協働の先進県に

 

 


1965年大分県生まれ。同志社大学
文学部社会学科社会福祉学専攻卒。
兵庫県内の市町社会福祉協議会を経て
90年(社福)兵庫県社会福祉協議会の職員に。
阪神・淡路大震災では災害ボランティア・
NGО支援等を行い、「ひょうごボランタリー
プラザ」の立ち上げにも参画。
地域福祉部長、生活資金部長、企画部長等を歴任。
コープともしびボランティア振興財団理事、
兵庫県ボランティア協会理事等を担う。

 

「社会福祉協議会の仕事って、知ってますか。社会福祉を協議する組織ですよ。
それも、兵庫県全域を対象にした協議会の仕事って、なかなか奥が深いですよ」。
そう笑顔で語るのは、当財団の理事でもある馬場正一さんです。
兵庫県社協の役割と醍醐味などについてお聞きしました。

社会福祉の道を目指した
さまざまな思い出

私は大分県の国東半島の田舎町で生まれ、大学進学を機に関西に移りました。
大学の専攻は社会福祉ですが、高校の進学指導の先生から当時はまだあまり知られていない社会福祉の道へ進むことに「進路を考えなおしたらどうだ」等、何度か意見をいただいたのを覚えています。
そんな社会福祉に関心を持ったのは幼少期の出来事が原体験のように思います。
両親は家業の豆腐屋の商売で忙しく、私は「おばあちゃん子」として育ちました。
小学生のとき、学校から帰ると、祖母が倒れているのを発見。近所に住む叔父を呼び、祖母の一命を取り留めたことがありました。
祖母が親戚たちの前で「この子は命の恩人だ」と言ってくれたことは今でも忘れません。「誰かの役に立ったんだ、これからも誰かの役に立ちたい」と思った瞬間でした。

大学では「社会福祉学研究会」というサークルに所属し、ゼミで学んだ福祉理論の追求やボランティア活動を行っていました。
ボランティア活動の一つに同年代の筋ジストロフィの男性の車いす介助があったのですが、あるとき彼が松田聖子のコンサートに行きたいと言うので、車いすで会場に向かったところ、専用通路からスムーズに専用席に案内していただけました。バリアフリーがいかに大切であるかを感じた思い出です。

社協が変われば、地域も変わる
地域が変われば、社協も変わる

行政でも民間企業でもない社協のような中間の組織は、自由な立ち位置で福祉の仕事ができると思い、就職活動は社協一本に絞っていました。しかし、なかなか募集がなく、卒業直前の2月にようやく、県内のある市町社協の募集があり、採用試験に合格することができました。
当時の社協の仕事は、老人クラブや遺族会などの団体事務が半分、葬祭壇の貸出や結婚式場の運営が半分と、目立った地域福祉活動はありませんでした。
「それなら自分がやってやろう」と意気込み、理解のある地域住民と連携し、福祉委員の設置や給食サービスの実施、社協会員会費制度を導入しました。
よそから来た若者が頑張っていると温かく応援してくださる人たちと、社協で働く先輩からの「石の上にも三年」という言葉が心の支えでした。

私が仕事でこだわってきたことは二つあります。
一つ目は、社協は「住民主体の原則」を持っているので、こちらの呼びかけを強制するのではなく、現場の感性や意見を尊重すること。
二つ目は連絡調整に心を砕くことです。社協の最大の役割は何かと問われたら、連絡調整だと思います。これは「中間支援」という言葉に置き換えられますが、いろいろな団体を対等につなぎ、「WIN -WIN」の双方プラスの関係を築いていくこと。三方良しという言葉がありますが、つなげることによって「よい化学反応」を起こしたいです。
その触媒の役割が社協だと思っています。

 

「ほっとかへんネット」で地域のSOSをキャッチしよう

約10年前、NHKが報道した「無縁社会」の実態は私たちに大きな衝撃を与えました。
孤独な高齢者や引きこもる若者・中年、ワンオペ育児に悩む母親など、希薄な人間関係による現代社会の問題が浮き彫りにされました。
これらは誰もが避けられない身近なテーマです。
この状況をなんとかしようと兵庫県社協では「ストップ・ザ・無縁社会」全県キャンペーンを平成24年に提唱し、様々な啓発活動に取り組んでいます。
翌年から、県内の社会福祉法人をつなげる「社会福祉法人連絡協議会(ほっとかへんネット)」の立ち上げに着手しました。
これまで、市区町域では特養や保育など、施設の種別ごとの会合はあっても、「社会福祉法人」というくくりで集まる機会はありませんでした。この取り組みでは多種多様な地域資源がつながり、市区町域でのセーフティネットを展開していくことを目標にしています。「ほっとかへん」を合言葉に、居場所づくりやごみ屋敷問題の解決など、地域の特性に応じた活動が行われています。

そのような地域の課題解決をサポートする組織として、ともしび財団も意義深い事業を行っています。県内にはたくさんの助成団体があり、それぞれのミッションに基づいて活動しています。ネットワークがあれば、重複している部分や着手できていない分野などが解消され、よりきめ細かな支援が実現できるかもしれません。
それぞれの財団の持ち味を活かしつつ、協働できるような仕掛けを考えてみたいですね。

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