泉 和男さんのちょっといい話

2012年7月6日投稿

NPO法人こども発達サポートセンター理事長(言語聴覚士)

泉 和男さんのちょっといい話

発達に障がいをもつ人たちの豊かな地域生活について、その支援法を研究したい

泉 和男さん

泉和夫さん

泉和夫さん(いずみ・かずお)1980年日本福祉大学社会福祉学部卒、同年「おもちゃライブラリー」開設。86年京都教育大学重複障害児教員養成課程修了。姫路市総合福祉通園センター、社会福祉法人「こども発達相談センター」を経て、2005年NPO法人こども発達サポートセンター設立。児童発達支援事業所、生活介護事業所の運営、神戸医療福祉専門学校言語聴覚士教員

今回ご紹介する泉さんは、障がい児の療育にかかわる仕事をしようと、ボランティア活動を皮切りに現在はNPO法人の代表をされるなど、地域のなかでこつこつと、発達に障がいをもつ人々の言語療育や生活支援活動を続けてきました。今年、制度の大きな転換期を迎え、これまでの実践をよりよいものにするために、さらなる研究が必要と、当財団の調査研究助成を受け、研究活動をおこなっています。

身近で相談できる居場所づくりの大切さを実感

私は子どもの頃から、子ども会のリーダー活動やボーイスカウトを経験したことから、子どもの社会教育について関心をもっていました。大学では学校外教育をテーマに学び、将来は障がいをもつ子どもたちの療育にかかわりたいと思いましたが、当時そのような仕事に就くことは難しく、卒業後は特別養護老人ホームに勤務。ボランティアとして、高砂市でおもちゃライブラリーを始めました。福祉センターの会議室を借り、寄付などで戴いたおもちゃを用いて、障がいをもつ子ときょうだいに限定し、療育支援をおこないました。

おもちゃライブラリーではお母さんたちから療育に関する相談がどんどん集まるようになりました。当時は、障がいをもつ子どもの訓練のために、皆さん遠くまで通われていて、近くに相談できる場がほしいという要望を多く聞きましたね。

このような問題を解決したいと思い、知り合いの保育園の園長にお願いし、社会福祉法人の傘下として「こどもの発達研究所」を立ち上げたのです。同時に障がい児教育について京都教育大学専攻科に入学し、仕事を続けながら1年間通いました。

専門性と知識を地域に生かしていこう

研究所の職員として仕事をしながら、発達障がいについての専門家(医師、セラピスト、教師、保育士たち)との勉強会を実施していくなかで、自分自身の専門性や実践力を身につけたいと思うようになりました。

ちょうどそのころ姫路に「ルネス花北」(総合福祉通園センター)ができるという話を聞き、こどもの発達研究所を後任に託し、言語聴覚士として就職。なぜ言語聴覚士なのかというと、おもちゃライブラリーをやっていたころから言葉の遅れについての相談が多く、言語について勉強していたのです。実際、障がいをもっている子の8、9割は言葉の発達に障がいがあり、言葉やコミュニケーションの発達の大切さを実感したからです。

言語聴覚士として9年間勤め、自身の専門性を高めることができましたが、ふと地元の高砂を見ると療育があまり進んでいないことに気づきました。「ルネス花北」を中心に姫路市の療育は充実する一方、周辺の市町は姫路におまかせになってしまったのでしょうか。自らが「ルネス花北」で学んだ専門的知識や経験を地元で生かしたいと思い、古巣であるこどもの発達研究所 (こども発達相談センターに名称変更)に戻ることにしました。

その後、周辺市、町の保健センターでおこなう1歳半健診や3歳児健診のあとに、言葉の遅れを心配される子どもなど、療育相談についての委託事業をいくつか引き受けることで経営的な見通しがたち、社会福祉法人の傘下を離れ、2005年にNPO法人こども発達サポートセンターを立ち上げました。

ゆらんこ

住宅地にある一軒家がNPO法人事務所兼「ゆらんこ」

こども発達サポートセンターがめざすもの

私は専門学校の教員として言語聴覚士の育成もおこないながら、同時に発達に障がいをもつ子どもたちやその保護者の方々の療育支援に携わってきました。子どもの成長にともない、求められる支援も多様化していると考え、昨年に児童発達支援事業、放課後等デイサービス「ゆらんこ」を高砂市内に開設、生活支援事業所「オーク」(特別支援学校を卒業後の人たちの生活の場)を明石市内に開設しました。

児童発達支援事業は障がい幼児の地域療育の場です。また放課後等デイサービスは学童期以降の障がいをもつ子どもの、地域で自立を促進するための居場所、いわゆる障がい児の学童保育といったものです。「ゆらんこ」ではこの二つの事業を担っており、幼児から小学6年生までを対象としています。児童発達支援クラスは、週3日午前中に開設しており、親子での参加です。学童の放課後等デイサービスは日曜日を除く週6日、15時から17時まで開設。それぞれ、子どもの発達に合わせた生活、学習、運動支援プログラムを実施しています。発達に障がいをもつ子どもを支援するには、その特性を理解し、配慮のある対応が求められます。それは言語の療育にもいえることですが、保育や課題に対して子ども自身が関心を示し、身を乗り出して参加できるようなプログラムを計画することと、活動や課題に対して達成感や喜びの共感できる瞬間、瞬間を積み重ねていくことが大切だと考えています。

児童発達支援での親子クラスでは、親子がしっかりとつながり合い、ともに育つことの喜びや共感の輪が、同じクラスに参加する親子との間で共有できればと考えています。

このようなきめ細かい取り組みは、思春期、青年期、成人期へと向かうなかでの、社会参加や自立に結びつく土台づくりとなると考えています。

発達に障がいをもつ人たちが生涯にわたり、豊かな地域生活をおくるにはどのような実践が必要か、運営する児童発達支援や放課後等デイサービス、生活介護事業所、言語聴覚士の活動を通して、支援のあり方について研究していきたいと思っています。

*2012年度から児童デイサービスが自立支援法から児童福祉法のなかで運用されることになり、放課後等デイサービス(支援事業)に変更。

ボランティアで「おもちゃライブラリー」をされていた当時のおもちゃです。

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