賀川督明さんのちょっといい話

2012年4月5日投稿

賀川記念館館長

賀川督明さんのちょっといい話

持続可能な社会をめざし、暮らしの創造と実践について提案したい

賀川督明さん

賀川督明さん(かがわ・とくあき)1953年東京生まれ。デザイナー。2004年から自作した山梨の自然住宅に拠点を移し活動。賀川豊彦の活動開始100年を機に「賀川豊彦献身100年記念事業」に参画。2008年、神戸にも拠点を設ける。2010年神戸の賀川記念館館長に就任。社会福祉法人・学校法人イエス団理事。財団法人雲柱社評議員。兵庫県ユニセフ協会理事。カガワデザインワークショップ有限会社代表。2012年全国国際協同組合年実行委員。

〝よりよい社会づくり〟のために生涯を捧げた、社会運動家・賀川豊彦。コープこうべの前身は、賀川の指導のもとに誕生した生活協同組合です。賀川豊彦の志を引き継ぎ、コミュニティセンターとして地域福祉に努め、現代社会のさまざまな問題に取り組む「賀川記念館」。館長の賀川督明さんに、お話を伺いました。

協同組合には暮らしを創造するチカラがある

いま、私がいろいろなところに呼びかけているのは「11えん募金」の運動です。11えんの募金によって被災地とのご縁を紡いでいく取り組みで、「11」は、3・11はもちろん、アメリカ同時多発テロ事件の9・11、それにハイチ震災の1・12や阪神淡路大震災の1・17を連想する数字でもありますね。被災の記憶と支援を続けていこうというアクションでもあるわけです。神戸大学の学生たちが毎月11日に街頭募金をおこなっていますが、これに限らず、それぞれの団体や個人のやりやすい方法で始めてもらえたらと思います。
集まった募金を被災地に携え、学生たちは現地に出かけます。今の大学生は阪神淡路大震災当時、幼稚園生ぐらいで、震災体験はあるけれど、復興のリアリティに乏しく、親たちの気持ちについていけてなかったですね。東日本の被災地を訪ねることで、「そうか、このことなんだ」というリアリティを持ち、「ぼくらのまちはまだ復興していない、痛みを持っている人がいる」ということに気づいたのではないでしょうか。だから今年の〝1・17〟には初めて参加した若者が多かったように思います。若者を東日本に送りこむことは、現地の復興支援に限らず、神戸の次代をつくる人たちの育成につながるのではないでしょうか。息長く取り組めるしくみをめざしたいものです。
フクシマの原発事故以降、これまで中央集中でやってきた取り組みを分散すべきでないか、という認識が広まりつつあります。エネルギーだけでなく、食糧生産や下水道などあらゆる分野において……。そのほうが持続可能であるのなら、賀川記念館として放っておけません。私たちには、今を生きている人だけでなく、これから生まれてくる人たちも含め、暮らしの創造について取り組んでいくという基本姿勢があるのです。
おりしも、2012年の国連の国際テーマは「すべての人のための持続可能エネルギーの国際年」と「国際協同組合年」です。そのせいか、最近では協同組合に関する講演依頼が多く、私は外野の人間として、ある意味無責任というか(笑)、非常に刺激的な提案をしています。生協は暮らしを支える運動体なのですから、新しい協同組合を組合員自らがつくるような掘り起こしをおこなってほしいと思います。上からかぶせる形で一部門にしてしまってはムーブメントになりにくい。たとえば、原発に反対するだけでなく、生産者の側に回り、エネルギー生産組合をつくるとか、そのような仕掛けが必要に思いますね。

家庭の中に工夫を取り戻し、豊かな営みを

生協が支えようとする暮らしは食以外にもたくさんあると思いますが、エネルギーの有効利用でいえば、住宅も大きな問題です。日本の一戸建て住宅の建て替えサイクルは約25年といわれ、一世代限りの消耗品となっています。木造建築物の寿命が短いわけではありません。現にフィンランドの木造建築物の建て替えサイクルは150年だし、そもそも日本には築200年や300年という民家が多数存在しています。長寿で本来、半公共物だった住宅が、いつの間にかハリボテになり、洋服やクルマのように消費される時代になってしまいました。生協では梱包材の使用を減らすなど、資源の節約に懸命に取り組んでいます。それも大切ですが、住宅1軒を意識してつくったら、ものすごいエネルギーや資源の有効利用につながります。暮らし全体のシーンでこだわるべき事柄、つまり家政学にもっと関心を持ち、進化させるべきではないでしょうか。
私はインテリアや家事など、オトコにしては家庭内の事柄が好きです(笑)。賀川の家風がそうでしたから。人は、工夫をつみ重ねると、とても豊かになれるものです。その豊かさは、なにびとにもおびやかされることなく、自分のストックとして残っていきます。性差や年齢に関係なく、家庭の中にも工夫を取り戻すようなプログラムも提案していきたいと思います。

賀川記念館事務所にてインタビュー

賀川記念館事務所にてインタビュー

ボランティアは家族と社会をつなぐパイプ役

組合員活動や賀川記念館の地域活動において、最近とくに感じるのは、夫婦関係のありかたです。夫婦が愛し合う関係にないと、子どもがうまく育たず、親密圏が形成されにくくなります。親密圏が希薄だと、子どもはありのままの自分を見せず、立ち入ることも許さないというふうに、人との深い関わりを拒否してしまいます。住宅同様、夫婦や親子の関係もハリボテになってしまったというか……。家族間のコミュニケーションが乏しいと、どんなにすぐれたプログラムを提案しても、うまくいかないものです。社会の最少単位である家庭を心地よくしたり、社会との関係性を紡いでいくのがボランティアの役割であったりします。ボランティアは、生活の一部としてごく当たり前に存在しますが、実はものすごく重要なポジションにあるのですね。
また、「ともしび」は私たちクリスチャンにとって、「周りを明るく照らす」とても大切な存在です。持続可能な社会をめざし、共に歩んでいきましょう。

賀川

賀川記念館(神戸市中央区吾妻通5-2-20)2,3階は、幼児園と学童保育、4階には賀川豊彦たちの活動を紹介するミュージアムや住民の憩いの場「天国屋カフェ」などがある。

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