石崎和美さんのちょっといい話

2009年10月12日投稿

むこがわCAP代表。神戸大学大学院総合人間科学研究科ジェンダー研究・学習支援部門専攻
石崎和美さんのちょっといい話

石崎和美さん

石崎和美(いしざき・かずみ)さん1978年甲南女子大学文学部卒、第一子を出産後、専業主婦を10年間経験し、97年CAPスペシャリスト取得、むこがわCAP代表。2005年NPO心のサポート・ステーション相談スタッフ、06年母子自立支援施設カウンセラー、07年須磨区保健所MCG事業カウンセラー。兵庫県内高校生対象デートDV防止授業、シングルマザー支援講座、HCセンター外部研究員としての活動も実施。

厳しい環境にある母親をエンパワメントし、健やかな親子関係に貢献したい

 

母親が貧困やDVの被害者であると、子どもへの暴力や虐待につながりやすいといわれます。石崎和美さんは暴力の再生産を断ち切るには母親への支援がまず必要と、当財団調査研究助成を受け、母親対象のエンパワメントプログラム開発をおこなっています。

CAPは生きる力を引き出す

私は地域でCAP(子どもの暴力防止プログラム)活動に取り組んでいますが、そのきっかけは、小学校のPTAが開催したCAPの大人向けのワークショップに参加したことでした。子どもにあれもこれもしてあげなければ、という子育ての風潮に疑問を持っていたので、“子どもには自分で解決する力がある”というCAPの考え方に共感を覚えました。ぜひ、CAPを提供する側になりたいと思い、養成講座を受け、地元伊丹でグループを立ち上げました。

伊丹市は人権施策の熱心な自治体で、早くからCAPに理解を示していました。大人向けCAPを全小学校(17校)で実施することを私たちグループに依頼してくれ、現在では全小学校の1年生を対象にCAPをおこなっています。1年生の子ども達も《安心・自信・自由》の権利をしっかり受け取ってくれ、「あなたは権利を持ったとても大切な人」ということを理解しています。友達にいじわるをされた子は、CAPのすぐ後に「いじわるされて嫌だった」と相手に打ち明け、解決したという事例もあります。

なにより、現場の先生方にCAPを理解していただくことで、子どものあざを見つけたり、いつも同じ服を着ているなど、虐待されている児童を発見できたケースもいくつかありますね。また、ある中学校でのCAPは、1年目は生徒が抜けて人数もまばら、モノが飛んでくる始末でした。

そういう状況でも続けていくと、“CAPのおばちゃんたち、一生懸命言ってくれている”と話を聞いてくれるようになり、7年目で誰ひとり抜け出さなくなりました。もちろん生徒の顔ぶれは変わっていますが、一番変わったのは先生の意識でしょうか。上から目線ではなく、子どもに寄り添うというか。卒業してから学校を覗きに来る生徒が増えたそうです。続けていくことが大切で、CAPによって先生を勇気づけることができたかなと思います。

私が変われば、家族も変わる

そもそも私自身がCAPを知って、とても楽になりました。子どもの持つ問題解決力を信じることができたのと、自分にも可能性がいっぱいあるんだ、と思えるようになりました。母親だから、妻だからと、つい役割で制限してしまいますが、ひとりの人間としてやりたいことをやったらいいことに気づきました。CAP活動をしていくなかで、自分の考えを言語化でき、きちんと言えるようになったのもよかったですね。

夫も変わりましたよ。話し合い、喧嘩もしましたが、折り合いがついたのは「僕が定年になったら、役割を入れ替わろう。君が外に出たいのなら、僕は家事をする」という夫の提案でした。その準備として、夫は掃除やごみ出しを担当しています。4人の子どもも含めて、意見のぶつかりもある中、みんな機嫌よく、なんとかやれていますね(笑)。

母親への支援が母子関係の力に

現在カウンセラーに行っている母子自立支援施設は、貧困やDV、障がいなどで子育ての困難な母子が生活しています。凝縮された社会問題がすべて存在するといっても過言ではありません。ふだんCAPで出会う子どもたちに「うれしいってどんなとき?」と聞くと、「お母さんといるとき」「友達と遊ぶとき」という答えが返ってくるものですが、施設の子は「友だちがいじめられているとき」「けがさせられているとき」などと、わざと言う場合があります。親から虐待を受けたり、DVを見ていたなど、子どもとして保障されるべき環境で育っていないからだと思います。

そんな生育歴でも、子どもは柔軟な回復力をもっていて、エンパワメントのワークを受けることで、見事に変わっていきます。ところが家に戻ると、お母さんから否定的な言葉を言われてしまう。やはり母親へのエンパワメントが先決で、母親自身の自己肯定感を高め、ストレスを軽減していくことが、自立への第一歩につながると考えました

お母さんが変われば、子どももすぐ変わります。支援プログラムを受けたあるお母さんは、プログラムを受けた日は「子どもへの声かけが全然違う」と言ってくれました。

今後、母親への支援プログラムを完成させ、母子自立支援施設に限らず、地域にも広め、暴力や虐待を防止していきたいと思っています。

*エンパワメント…その人が持つ本来の能力を引き出し、自分の生き方を自分で選び決めていく力を養う。

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