後藤至功さんのちょっといい話

2008年10月1日投稿

佛教大学大学院社会福祉学研究科社会福祉学専攻
後藤至功さんのちょっといい話

「協議」と「協働」をキーワードに、
災害にも強い地域づくりを提案したい

後藤至功さん

後藤至功(ごとう・ゆきのり)さん。1973年、宝塚生まれ。95年に兵庫県社会福祉協議会入局後、地域福祉推進の業務に携わる。2006年、同社退職後、(有)コラボねっとの研究員となる。当事者主体の社会改革をライフワークにしており、2000年発足の(特)ひょうごセルフヘルプ支援センターの副代表もつとめる。また、2007年より佛教大学大学院社会福祉学研究科社会福祉学専攻。

地震や水害などさまざまな災害が日本各地で頻発し、防災・減災への関心が高まるなか、社会的に弱い立場の人たちが取り残されないようにするにはどうしたらいいか。2008年度の当財団の調査研究助成を受け、調査研究中の後藤至功さんにお話を伺いました。

災害時の要援護者支援を研究

学生時代から社会福祉に関心を持ち、社会的に弱い立場の人たちへの施策について誰かが決めるのではなく、当事者が積極的に施策立案に参画できる社会であってほしい。そんな思いから兵庫県社会福祉協議会に就職しました。

阪神・淡路大震災の復興期を経て、地域の社協やNPO、法人施設等と一緒に地域づくりを進めてきましたが、度重なる社会制度の変更により、自立支援法や介護保険の対応に追われ、自分をブラッシュアップする時間がなく…。専門的な勉強をしようと県社協を辞め、大学院に進学しました。

同時に、地域防災施策を推進している組織「コラボねっと」の研究員となり、現在は《災害時の要援護者支援のありかた》について、研究と実践の両輪で活動をしています。

要援護者の把握は共通の課題

大規模災害が発生したとき、高齢者や障がい者が取り残される現状は変わらず、2004年の新潟中越地震や台風23号の水害のときもそうでした。このような反省のもと、2006年に内閣府は「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を策定しました。

この災害時の要援護者とは、一例をあげると、*『必要な情報を迅速かつ的確に把握し、災害から自らを守るために安全な場所に避難するなどの災害時の一連の行動をとるのに支援を要する人々(高齢者、障害者、外国人、乳幼児、妊婦等)』となっています。

最近では、自治体は災害時要援護者の安否確認を速やかに行い、県と国に報告することが求められ、2007年の能登半島地震などでも実施されました。能登の門前地区では日ごろから使われていた要援護者マップのおかげで、約4時間で高齢者の安否確認が終了。新潟中越沖地震の柏崎市の例では、高齢者の安否確認は、民生委員を中心に早い段階で行われましたが、障がい者の確認が遅れたようです。都市の規模が大きくなるほど地域にどんな人が住んでいるか見えにくくなります。要援護者の把握は全国的な課題となっているのです。

災害にも強い地域をつくろう

そんななか、今、私がかかわっている長野県松本市のケースを紹介しましょう。松本市は30年以内に大規模地震が起こる確率が全国第2位といわれ、市は地域防災施策にかなり力を入れています。情報公開も比較的進んでいて、危険箇所をしめしたマップを公表するなど、自宅が危険箇所にあるかどうか、住民が把握できるようになっています。

松本市では自治体のトップダウンではなく、地域との協働を基本としながら、協議を積み重ね、ボトムアップ方式で防災対策を進めていることが大きな特徴であり、評価すべき点です。というのは、大規模災害が起きると行政機能がマヒし、自治体は最低3日間は地域に入れないといわれています。つまり、住民のみなさんに地域の安否確認をお願いするしかなく、地域住民の力がものすごく重要になるからです

私たちが提案する講座では、まず、地域のお宝(拠点、人材・組織、活動サービス、情報、物資・財源、歴史・文化)探しをし、日常および災害時の地域課題を明らかにした上で、それらが課題解決にどう生かせるかを話し合っていただきます。地元住民の話し合い(協議)で決めるというプロセスが大切。日ごろから地域のなかで支え合いのしくみや支援活動がきちっと機能していると、災害時にも生きてきます。災害に強い地域づくりではなく、災害にも強い地域づくりということを改めて強調したいと思います。

要援護者台帳やマップを作るのもいいですが、金庫に眠らせては意味がありません。台帳・マップを作ることを自己目的化しない、このことが重要です。作ったからにはマップを給食サービスに使うとか、日常と連動させないといざというときに役立ちません。つまり、防災を切り口に自治や地域づくりをどう進めるかが大事なんですね

また援護を受ける当事者の声や力も生かしてほしい。新潟中越地震では視覚障がい者団体が特技を生かし、避難所でマッサージのボランティアをされました。当事者は守られるだけの存在ではないことがこの事例からもわかります。

地域づくりを進める際には、「協議」や「協働」といった横につながる視点を大切にしていきたいものです。

*「災害時要援護者対策の進め方について(報告書)」内閣府・2007年4月公表資料

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