田端和彦さんのちょっといい話

兵庫大学副学長・生涯福祉学部社会福祉学科教授

これからの社会は
「利用者目線」が重要なポイントに

1964年三重県生まれ。93年広島大学大学 院生物圏科学研究科博士課程後期修了、 博士(学術)。広島大学総合科学部助手を 経て、95年の兵庫大学開設に伴い経済情 報学部講師に就任。2008年生涯福祉学部 教授、社会福祉学科長、2012年生涯福祉 学部長、2016年より兵庫大学・兵庫大学 短期大学部副学長。専門は地域政策、地 域経済学。著書に『参画と協働:理論と実 践』『地域福祉の原理と方法』他。

「物理を学んでいた自分が、畑違いの地域づくりの専門家になるとは」。そう笑顔で語るのは当財団の「やさしさにありがとう ひょうごプロジェクト」助成選考委員長でもある田端和彦さんです。地域の活性と人づくりについてお聞きしました。

地元の良さや得意分野を
知ることは大事

私はもともと理系の人間で、大学では実験室に閉じこもり、物質の特性について研究する日々を送っていました。しかし大学院では違う分野を覗いてみたいと思いました。物理の研究というのは真理を深く追求するため、タコツボというか、隣が何をやっているのかまったくわかりません。総合的に学問を捉え直したいと考え、選んだのが環境の分野で、なぜか文系の社会環境を専攻したんです。財政学など国や地方自治体の経済活動を一から勉強しました。地域イノベーションシステムや社会的経済に関する研究が水に合ったのか、その分野の研究者に。広島大学で助手をしていましたが、兵庫大学への就任が決まっていた1995年、阪神・淡路大震災が起こりました。すぐに被災地に入り、神戸商科大学(現兵庫県立大学)の先生方と一緒に被災状況を調査しました。自治会などの地域コミュニティが崩壊したが、その後人々がどのように立ち上がり再生していったのか、あるいは地域活性のためのコミュニティビジネスの創出など、地域づくりについて数多く関わらせてもらいました。
地域が賑わうには人口さえ増えればいいと思われがちですが、それに頼らず活力をもって暮らしていけるヒントはあるものです。たとえば今、地方の過疎化が進み、店舗が撤退しています。撤退後、地域の人たちが自主運営したいと言い、担い手は確保できてもその中だけでは採算は厳しい。外からのお客さんや観光客を呼び込まなければ経営は成り立ちません。そのためには地域の特産品やお客さんに喜んでもらえる売りモノを見つけること。地元の良さや自分たちの得意分野で勝負したらいいんです。意外と気づかないものですが、大事な視点です。そのようなケースを語り、実現可能な地域づくりをアプローチします。
市民団体が活動を続けるにも組織化(=人づくり)と活性化(=財源)が大きな要素になります。その一つとして指定管理者制度を活用することも有効だと思います。公共施設の運営を民間に委託する指定管理者制度は2兆円ともいわれる市場規模で、多くは自治体の外郭団体が請け負っていますが、企業も乗り出しています。そこに施設の利用者でもある市民がボランティアグループを作り、NPOを組織化して指定管理者を担うのです。東播磨生活創造センター[かこむ]はその例で、市民グループが指定管理者となり、主体的に生活創造と地域づくりのための活動を支援しています。このように安定した事業を続けると人が育ち、次のアイデアも出てきますね。
知恵と工夫で財政を確保し、地域を担う団体やNPOが育んでいってほしいものです。

社会のニーズは「利用者目線」
地域活動に取り入れよう

私が所属する兵庫大学では大学教育に相当するレベルの講座を外部に広げる[エクステンション・カレッジ]を開設しています。そこでは知識や技術を学ぶだけでなく、市民性を高めることを目的に年間約130の多種多様な講座を実施し、受講料も手頃なことからリピーター率が高く、好評です。地域活動の担い手が増え、社会参加・貢献につながっていくことを期待したいですね。
ともしび財団の「やさしさにありがとう ひょうごプロジェクト」は意欲ある市民と賛同企業を結び付けるユニークな取り組みで、困りごとを解決する新しい発想の市民グループが助成団体に選ばれています。彼らに共通するのはしっかりした「利用者目線」を持ち、賛同企業もそのような動向をよく理解していること。今、社会のニーズは利用者(消費者)目線がどれだけあるかが問われていると思います。これからの地域活動も利用者目線が重要なポイントになることでしょう。

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